EXTRATERRESTRIAL ORGANIC MATTER
EXTRATERRESTRIAL ORGANIC MATTER

 

 

 

F O R M A T A

2020 – 2022

宇宙にはどんな物(体)がいますか?

 

地球外の世界では、物質が自己集合して進化していないと、どうして言えるのでしょうか?

 

私たちの物質文化と人為的な影響が、地球を超えて拡大している今日、エイリアン物質をアクティブでパフォーマティブなものとして体験することは、 存在論的に、一体どのような意味を持つのでしょうか?

FORMATAは、液体ホルムアミドが存在する地球外惑星を模擬した実験リアクターの中で、活動的な液滴を演出し、さまざまな感覚器官によるインスタレーションです。この 「ミニ惑星 」に生息する活動的な液滴は、隕石や彗星に見られる有機物質に似たもの、すなわち、脂肪酸、炭化水素、アミノ酸で構成されています。地球とは異なり、大気は、アンモニア、一酸化炭素、アルゴンガスで構成されていて、その表面は、ホルムアミドの暖かいプールで覆われています。アミノ酸で満たされたホルムアミドのプールの中で、これらの液滴は静止状態から離れ、変形し、活発に動き、自己分裂します。物質とエネルギーの流れが交わる、非平衡な実体が、活動する物質の集合体になるのです。

 

私たちにとって重要なのは、このなじみのない実体が地球外環境で遂行能力をもち、自律的にふるまう様子を、鑑賞者が直接体験することです。目指しているのは、複雑なメカニズムや遺伝情報(RNAやDNAの分子)、水がなくとも発現する、物質性に根ざした行動能力です。いいかえれば、自己組織化した身体、組み込まれた原始代謝、変形・移動・自己分裂などの能力すべてが、マテリアル・エージェンシーの形で、この集合体というエージェントの中に存在することを示そうとしています。

 

活動的なエイリアン

物質を扱うことで、

物質を受動的、不活性、

あるいは

中立的なものとして、

実用主義的に

理解すること内在する、

人間中心的な

考え方に疑問を

投げかける。

素材

脂肪酸、炭化水素、アミノ酸、ホルムアミド、一酸化炭素、アンモニア、アルゴン、ヒーター、真空ポンプ、圧力計、LCDディスプレイ、ガスボンベ、高圧・高温反応器。

サイズ

W 5m x D 5m x H 3 (メートル)


エイリアン物質が、

物理的で肉体的な出会い

を通じて、活動的で

パフォーマンス的なもの

として経験されることは、

物質そのものがどのように

振る舞うかを理解する

助けになるだけでなく、

私たちが物質や物体、

生き物をどのように知覚し、

それとどのように

関係するかを、

その基礎から再考する

ことを可能にします。

この作品では、実体のエイリアン性、そして、それはまだ生命ではないものの、すでに多かれ少なかれ生きているという認識が、さまざまな形で来場者に突き付けられます。そのため本プロジェクトでは、鑑賞者とエイリアン的な能動的物質との身体的な出会いが、極めて重要になります。エイリアン的な能動的物質は、私たちが 「他者」 としての未知の、そして馴染みのない生命を実体化するのに役立つという点だけでなく、私たちが、活動的な宇宙における自分の立ち位置を再評価せざるを得なくなる、という意味でも重要なのです

 

エイリアン物質が、物理的で肉体的な出会いを通じて、活動的でパフォーマンス的なものとして経験されることは、物質そのものがどのように振る舞うかを理解する助けになるだけでなく、私たちが物質や物体、生き物をどのように知覚し、それとどのように関係するかを、その基礎から再考することを可能にします。人間と非人間のヒエラルキーを解体し、それを生きているものと生きていないものという尺度のないエージェンシーに置き換えることで、私たちの現在の物質との関係に挑戦します。こうした身体的な出会いを通して、物質が、さまざまなモードや程度の生命らしさを持つように変化することに関する、一般的な探究を始めることができると考えています。

 

 

CREDITS

ロックデザイン:奈古窯(井上 康)
実験施設:奈古窯 岐阜県産業技術総合センター
協力:情報科学芸術大学院大学[IAMAS] 、多摩美術大学情報デザイン学科メディア芸術コース 、東京大学大学院総合文化研究科